何度も読み返してしまいました。

2008年05月17日


今日、仕事でネット調べをしていたら、こんな書き込みを見つけました。


読めば読むほど、心に響くというか、何かが落ちるというか、何度も何度も読み返してしまいました。










-最近あなたが手をつないだのは、いつ、どこで、だれとですか?-

 病院の待合室に、70歳はとうに越えたかと思われる夫婦が、手をつないで入ってきた。
瞬間、待合室の静かなざわつきが停止した。
手をとりあった老人の微笑(ほほえ)ましい姿を見たのは久しぶりのことだった。

 しかし、その手をつないでいる意味は、仲睦まじいことだけが理由ではなかった。
おじいさんは片方の手で杖をついていた。
そして、おばあさんの介添えで、やっとのことで椅子に腰を降ろしたおじいさんは、
「あとは看護婦さんに頼むから。◯時になったら迎えにきてくれよ」と小声で言った。


ふたりの手は「ささえる」ためにあった。


 手と手が触れ合うという行為は、「つなぐ」に関わらず、ある意思を相手に伝えるひとつの手段でもある。
 私は、人前で、手をつないで歩くのが未だに気恥ずかしいと思っている。
だから町で手をつないでいる男女を見ると、、どうしてもつい好奇の目で見てしまう。
 思えば、私が異性の手を握ったのは高校時代のスポーツ祭でのフォークダンスと、
仕事に就いてから覚えた社交ダンスのときだけで、
特定の人の手を特定の場所で握った経験は記憶のなかにない。
 その後、私が意識して人の手に触れたのは、道を歩いていたときの、まだ幼かった子どもの手ぐらいである。
しかしそれは、愛情表現というより、子どもの束縛のためだった。
子どもを歩道からはみださせないための、「つなぐ」というより「つかむ」という行為だった。
 唯一意識して人の手を握ったのは、家人が危篤状態に陥ったときである。
映画やテレビドラマのそのようなシーンを見ていて、「泣かせる演技だ」だと可笑しくなったものだが、
いざその立場になると、自分も思わず家人の手を握っていた。
「時間の問題だ」と医者に言われて、する術(すべ)しか残されていないことが哀れでしかたがなかった。


 過日、テレビで、60-年代の頃のある青春映画を観た。
偶然知り合った若い男女が、次のシーンで手をつないで町を歩いている。
ああ、恋人同士になったんだ、とそのワンショットでその後の二人の関係がわかる。
映画の基本のモンタージュの手法である。
 しかし今日のこのような映画なら、手をつなぐというまだるっこい描写はしない。
次のシーンは、まちがいなくホテルの一室である。
しかもふたりはすでにベッドで抱き合っている。
日本映画の名作の一つに数えられる「遠雷」(監督・根岸吉太郎)では、
お見合いをしたふたりが、その帰りに何の抵抗もなくモーテルに寄る。
このシーンだけで、この作品(原作・立松和平)は大変な話題になった。
あえて言うなら、そこで使われた手の描写は「なでる」とでもいうべきか。


 また、「橋のない川」(監督・今井正)の、子ども同士が手を握り合うシーンは、
衝撃的なほどの別な意味合いをもったものだった。
小学校の朝礼の席で、部落出身の男の子の手を、
隣に立っていた女の子が躊躇(ちゅうちょ)しながら握ろうとする。
その手の触れた男の子は嬉しくなってしまう。
 しかし女の子は、男の子を好きになったのではなかった。
女の子はあとでこう告白する。
「部落の人の手は凍るように冷たいと家の人が言っていたので、本当かどうか確かめてみたかった」


-おててつないで のみちをゆけば

 童謡「靴が鳴る」の最初の歌詞である。
手をつなぐとスキンシップしたくなるほど楽しくなってくる、と純粋な子どもの心を歌っている。
 しかし、病院にきた老夫婦のように、私にももはや靴の鳴るような「おててつないで」が、巡(めぐ)ってくることはないに違いない。それならば、「ふれる」でもいい。「つかむ」でも「ささえる」でもいい。それらに、自分の意思を伝える手段として使える手が、まだ少しでも残されていることを祈りたいものだと思う。





あなたは大切な人と、最近、手をつなぎましたか?


Posted by つむぐ at 05:17│Comments(2)
この記事へのコメント
手というのは、あたたかいものですね。人をつないだり、つながったり。それだけで、何かを感じ取れたり。
昔から、痛いところがあると手をあてたり。お手当ても、大事な文化だと思いました。
Posted by にこにこmoonにこにこmoon at 2008年05月17日 13:14
にこにこmoonさん

この文章を読んでいて、手をつなぐことの奥深さがわかりました。ハグとはまた違うスキンシップがはかれますね。
Posted by つむぐ at 2008年05月19日 21:37
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