国と製薬会社に賠償命令
2006年08月30日
出産時に止血剤などとして投与された血液製剤でC型肝炎に感染したとして、患者が国と製薬会社三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)などに損害賠償を求めた薬害肝炎九州訴訟の判決が30日、福岡地裁であった。須田啓之裁判長は、フィブリノゲン製剤について80年11月以降の国と製薬会社の責任を認め、原告18人のうち11人に対して総額1億6830万円の賠償を命じた。全国5地裁に起こされた訴訟で大阪地裁に次ぐ2件目の判決。原告の救済範囲は6月の大阪地裁判決より広がった。原告側は、全国350万人とも言われるB型を含めたウイルス性肝炎患者全員の救済を国に求める方針。
訴訟では「いつの時点で血液製剤の製造販売を止めさせるべきだったのか」が最大の争点となった。
感染源のフィブリノゲン製剤について、原告側は(1)国が製造承認した64年には危険性や血清肝炎の重篤性は明らかで、承認すべきでなかった(2)米国食品医薬品局(FDA)の承認取消を知った78年には対策を取るべきだった(3)青森県で肝炎集団感染事件が発覚した87年には使用制限すべきだった--などと主張した。
被告側は「フィブリノゲン製剤は多くの産婦を出血死から救った医薬品。それぞれの時点における肝炎感染のリスクを考慮してもなお客観的に有用性があったことは明らか」と反論していた。
もう一つの感染源であるクリスマシン(第9因子製剤)については、原告側は「製造承認した76年当時から、肝炎感染の危険性は明らかで、有効性も証明されておらず承認すべきでなかった」と指摘。被告側は「有用性があることは明らかで、承認したことに違法性はない」としていた。
薬の健康被害に関する国の責任を巡っては、最高裁が95年のクロロキン訴訟判決で、(1)当時の知見で医薬品の副作用を考慮してもなお有用性があれば製造承認は適法(2)被害防止のために権限を行使しなかったことが著しく合理性を欠く時は違法--との基準を示している。
大阪判決は、フィブリノゲン製剤について、青森県の肝炎集団感染事件が発覚した87年4月以降で国の責任を認め、製剤に含まれるウイルスの活性化を抑える処理方法を変えた85年8月以降で製薬会社の責任を認めた。クリスマシンについては請求を棄却した。このため、原告13人のうち5人に対して国と製薬会社に賠償を命じ、4人に対して製薬会社のみに賠償を命じた。【木下武】
毎日新聞 2006年8月30日 14時32分 (最終更新時間 8月30日 15時09分)
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